賃料利回りからみた中古マンション価格



上昇続く近畿圏の賃料利回り、売買価格の下落が背景に

小規模や築年の古い物件、都心周辺区で高い利回り




●近年、不動産価格を収益性で判断する考え方が定着してきた。中古住宅も例外でなく、特に中古マンションでは賃料利回りから価格水準を見定めたり、査定時の参考値として収益価格を提示する動きもみられはじめた。

●近畿圏の中古マンションを賃貸運用した場合の利回りは、直近の平成15年1〜3月期で11%を超え、かつてない高水準となっている。価格調整はどこまで進んでいるのか、物件属性や地域的な利回りから最新の価格の動きを捉えることにする。


■近畿圏の中古マンション利回りの変化




このレポートで示す賃料利回りは、近畿圏レインズの成約データベースから集計した賃貸マンションの賃料単価を中古マンションの売買単価で割った、いわゆる表面利回り(=物件の稼動率や物件維持等の諸経費、税金等の控除を考えない利回り)である。


   



居住用物件の収益性としては一般に7%台を超えると魅力的とされることが多いようだが、諸経費の控除を考えない点や賃料の下落リスクを見込むと、8〜10%程度を超えれば投資に見合った価格水準であると考えられる。なお、ここでの利回りは売買単価と賃料単価の地域平均を対比させて算出しており、個々の物件の運用賃料を前提にしたものではないことに留意いただきたい。



近畿圏の利回りは11%台に



成約賃料データが取れる平成11年7〜9月期(H11年度第U四半期)以降の動きをみると、近畿圏の中古マンション価格の平均利回りは一貫して上昇しており、14年1〜3月期(H13/W)には10%台に乗せ、直近の15年1〜3月期(H14/W)には11.2%となった。11%台はこれまでにない高い水準で、一般的にみて近畿圏の中古マンション価格は高い利回りが期待できる水準まで下がったと言えるだろう。ただ、過去4年間の賃料単価が弱含みながらも低位安定なのに対し、売買単価は21.1万円(H14/W)と2割以上も下落しており、利回りの上昇が実質的な収益性の向上によるものではないことがわかる。しかし、10%を超えた14年以降は、既に十分な価格調整を経た水準となっており、投資物件としても魅力が増していると言って良いだろう。


■物件属性別の利回り



ワンルームの利回りは12.9%



賃料利回りは、物件属性の違いによって大きく異なる傾向を示す。

間取り別の利回りをみると、個人投資家にも人気のワンルームが12.9%と最も高く、収益物件としての特徴がはっきりと現われ、1K〜1LDKも12.1%とワンルーム並みの高い利回りを示している。一方、2K〜2LDKは9.2%、3K以上では8.5%といずれも10%を下回り、取引の9割以上を占めるこれらの物件の利回りは低下する。しかし、8%を超える水準は決して低くなく、13年度と比べても3Kを中心に売買単価の下落でむしろ利回りは上昇し、割安感は高まっている。ただ、賃料が堅調に推移している首都圏と違って収益力がアップしている訳ではなく、3K以上やワンルームでも賃料が低下しているのが現状だ。


間取り別では、築年数や立地条件よりも利回りの変化が著しいが、これは大きな間取りの物件に対する賃貸需要が少なく、売買単価よりも賃料単価の低下が大きくなることが直接の要因となっている。また、こうしたファミリータイプは必ずしも収益性だけで購入が判断される訳ではなく、収益価格を上回る売買価格で取引されている可能性も高いため、利回りが低下する傾向にある。


築11年以上で高い利回り



築年別には築10年が大きな分岐点となっており、11年以上の利回りは11%台であるのに対し、10年以下では9.7%と10%を下回る。しかし、13年度と比較すると10年以下の賃料はやや強含みで、収益性の改善が認められる。逆に、築21年以上で3K以上の物件は10%台に利回りが上昇したが、これは売買単価の大幅な下落によるものとなっている。

築年別では間取り別と逆に、築年が古くなるにつれて賃料よりも売買単価の落ち込みが大きく、これが古い物件の利回りの高さにつながっている。



立地条件による利回りの変化は小さい



駅からの徒歩分数などによる立地条件では、他の属性ほど利回りの変化はみられず、徒歩21分以上やバス便では売買単価の大幅な下落から、11〜20分以内よりも利回りが高くなる。徒歩10分以内も含め各条件とも9〜10%台の利回りとなっており、売買単価・賃料とも駅からの距離が遠くなるほど金額が低下する傾向に変わりはない。



■都市別の利回り状況



都心周辺区・近郊で高い利回り



利回りの違いを区市町村別にみると、ワンルーム〜1LDKでは、高槻市、吹田市、箕面市などの北摂方面や、大阪市福島区・城東区・東成区・淀川区など大阪市内の各区が挙げられる。ワンルーム等の収益物件の取引は、ストックが集中する大阪市内の御堂筋沿線や神戸市中央区の三宮駅周辺、京都市中京区や下京区の京都駅周辺など都心区が中心となっているが、利回りでは都心周辺区や近郊都市の方が高くなる。これは需要の多い都心が周辺よりも投資リスクが低く、物件価格も高いことで収益性が落ちる傾向にあることが理由として考えられる。


一方、2K以上では神戸市長田区や須磨区、大阪市生野区・西淀川区・住之江区・西成区・北区、京都市南区などで利回りが高い。こうしたファミリー向け中心の物件は本来、堺市や豊中市などの大阪府下やマンションストックが集積する都心区で取引が多いが、利回りが高いエリアは需要が比較的少ない都心周辺区が中心となっている。これらの都市では、収益性でなく売買価格の下落が利回りの高さにつながっている。


築浅でも7都市で10%超



築10年以下の築浅物件では姫路市や加古川市のほか、大阪市大正区・西淀川区・淀川区・生野区、神戸市須磨区・長田区などで利回りが高い。また、築11年以上でも大阪市の浪速区・西淀川区・生野区・淀川区や神戸市須磨区・長田区・兵庫区など、築浅物件でみられたエリアとの重複が多い。売買単価の低い郊外や都心の周辺エリアでは、築年を問わず利回りの高さが目立っており価格調整が進んでいることがわかる。

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一般的なファミリータイプの中古マンション利回りは首都圏では6〜8%台とされるが、近畿圏はそれより2%程度高い。今回集計対象とした都市で7%未満のものはほとんどみられず、全体的に割安感は強い。利回りの高い地域は売買価格が安く中古需要が弱含んでいるエリアでもあり、今後は居住用物件についても収益性の観点から、価格調整の進んだ状況を顧客にアピールする必要があろう。ワンルーム等の収益物件でも商品企画が大幅に向上している新築との競合を意識した大胆なリフォームにより、確実な収益力のアップを目指していくことが重要と考えられる。■ (以上、社団法人近畿圏不動産流通機構より抜粋)


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